ベラルーシからのゲスト


 大雪で東京も慌てふためいた先週末を経て、今週は積雪のためほぼ作業不能、来週遂に初の作業中止も決定した土壌スクリーニング・プロジェクト。これを書いている金曜午後現在も、雪はしんしんと降り続いています。
 そんな節目の週も、ならコープからお2人、大阪いずみ市民生協からお一人、さいたまコープからお一人の計4名がボランティアに来て下さいました。ありがとうございます。そしてそんな状況下、こちらでどんな受け入れ態勢をとれるか心配も吹き飛ぶ、特別なゲストの来福もありました。

 本プロジェクト始動には、2011年10月、当時福島大学副学長だった清水修二教授が牽引した「チェルノブイリ視察団」が大きく寄与しています。プロジェクトを主導する福大・小山先生や県生協連会長、専務はもちろん、現在小山チームの一員として八面六臂の活躍をされている石井先生も外部研究者としてそこに参加され、プロジェクト始動の英断を下したJA新ふくしま菅野専務もおられました。

水曜夜、通常の交流会として便乗させていただいた古澤氏を囲んでの懇親会。プロジェクト始動を決断されたJA新ふくしま・菅野専務に、視察中10日間同部屋だった小山先生と部屋で何があったのか、チェルノブイリ秘話をお聞かせいただく機会もありました

 そのツアーのコーディネイト、通訳を務めたベラルーシ国立大学・古澤晃先生が来福されたのです。現職に至った経緯は「まったくの偶然です」と謙遜されながらも、福島の原発事故以降、日本から一気に増えた行政他あらゆる組織による現地視察を切盛りされてきた活躍は想像に難しくありません。また、17日に福島JAビルにて拝聴した講演会からは、そもそも自分がベラルーシという国について何も知らなかったことを思い知らされました。

JAビル9階の会場から見えた、浪江町から避難している方々が住む仮設住宅

こちらは双葉町の仮設住宅。原発災害はまだ、当り前に継続中です


 彼の国における政府の権限は大きく、崩壊したソ連から秘密警察も現代まで受け継がれている。チェルノブイリ原発は隣のウクライナにあり、事故当時の風向きで大きな被害を受けるものの、現代の若者はほぼ意識もしていないし、国は素晴らしいものと喧伝しながら新たに原発を新設しようとしている。例えばネット上にあるような、日本人が懸念する放射能の影響について現地の医者に話すと皆笑うが、そもそも国として甲状腺ガン以外を放射能に起因する疾患を認めていないし、政府に何を聞いても公式見解しか返ってこない。市場の検査も健康検査も、国の指示があるものはしっかりやるが、一般市民は皆基本、本当の情報が出てこないことを前提に諦めている。

古澤さん、貴重なお話ありがとうございました

 印象的だったのは、「日本人は白か黒かを決めたがるが、チェルノブイリ事故でさえまだ27年しか経っていない中、当然わからないことばかりの低線量被曝などの問題は、どこかでグレーを認めないと前に進めないこともある」という、彼の地ならではの率直な見解でした。小山先生はそこに「日本の場合はやれていないことを『やっている』と言ったり、わからないのに『(汚染米などが)出ません』と言ってしまうから、余計状況が複雑になる」と補足を加えていました。

 積雪の現場検証と、貴重とはいえ懇親会や講演会参加に終始してしまった今週のボランティアですが、ワークショップは行いました。

 なら・巽さんは、「福島は大変だ」と聞くが、ではどのように県外の人間が役に立てるのか。今回は今後そうそう会えないような方々と交流ができたが、ではこれを地元に戻ってどう伝えるか。まずは家族と会社社員への伝達から始めるし、アカウント登録しているfacebookでの繋がりも今回は活きた。何はともあれ、少なくとも現場は前進しかしていないことがわかった。
 なら・中村さんは初のリピーターであり、今週は大雪や古澤先生来福など、期せずして初物づくし。実際のスクリーニング作業は前回できたし、今回の交流を経て福大、JA、生協の連携を実感できた。プロジェクトそのものを企画した方々に会えたのも収穫。チェルノブイリのその後についても理論だけでなく、背景となる日々の生活を知れて良かった。土壌調査から米の全袋検査まで、福島が今おかれている形勢を逆転できるほどに、例えば農薬の散布回数も記録できるとか、現在のトレーサビリティに磨きをかけ完成度を高めていくことに期待する。
 大阪・大浦さんはまず福島を見たかったと。原発というあまりに大きなハード、システムをどう考えたらいいのかわからず、漠然とした不安や恐怖、諦めが自分の中に共存していたが、実際に現地に来てみてほんの少しでも実態に近づけた。そういう意味で初日のレクチャーには意義があり、それにしてもベラルーシの「除染せず放置。そして強制移住」という対策は驚いた。このプロジェクトが思いのほか大規模であることがわかったし、公表すべきことは公表しながら、今後も継続的に関わりたい。
 最後にさいたま・染谷さん。過去にも神戸、新潟にボランティアに行ってきて、福島の復興に貢献したかった。レクチャーでは丁寧に質問に答えていただき、貴重な報告会も聞けた。今後会社の友人もボランティアに来るし、きちんと現地の状況を伝えていきたい。ベラルーシの話はあまりに先の未来の話過ぎて正直ピンとこなかった。とはいえとにかく地道な継続しかないし、また再度手伝わせていただきたい。

  1/18/2013
事務局