幻の挨拶(ならコープ創立39周年記念学習会にて)


 去る7月13日、どじょスク!で大変お世話になっています奈良にて、福島の今について報告する、貴重な御機会をいただきました。
 記念講演は福島県生協連から佐藤一夫専務と、どじょスク!を牽引する福島大・小山チームから石井秀樹特任准教授。
 同行した事務局にも「もしや挨拶の機会がある?」と、馴れない挨拶文を用意し、しかし時間の関係でお話はできませんでした。
 あくまで個人的見解が大部分を占めつつ、最後には少なからず、プロジェクトの進捗状況や今後の展望を含んだ文章です。ここに残させていただきます。

会場となった奈良ロイヤルホテル・ロイヤルホール外での展示

 創立39周年、心より、おめでとうございます。

 私からはほんの手短に、昨年10月に福島、そして生協の外部から来た立場でどじょスク!に携わらせていただき、見てきたことについて、話させていただきます。

記念講演はまず、佐藤専務のお話から始まりました

 原発災害は3つのことを教えてくれました。

 それは、まず「受身で黙っていてはいけない」こと。「自ら考え、判断しなければならない」こと。そして、「一人でできることには限界がある」こと。3つ目の教訓に関しては、森理事長もお話の中でご指摘されました。
 2011年3月、突如福島にふりかかった災害はそこかしこに「分断」を巻き起こし、多くの場合、それらはそのままそこにあります。しかし、同時に生まれつつあるかつてない「団結」については、当事者たちが気付いているだけで、まだあまり語られていません。
 ご存知のとおり「分断」は福島の市民、農家、家族等々の中に生まれました。しかし、だからといってそれら対立に翻弄され、目の前に山積みされた問題解決を停滞させられません。問題の根幹を見つめれば、そこには「福島を忘れさせない」、「福島を繰り返させない」、「子どもを守る」といった共有すべき揺るがぬ価値観が剥き出しのまま、あります。
 どじょスク!もその一つです。

 現状の放射能対策の多くは実態把握がされないまま実施されているため、期待された効果を発揮できていない状況が多く見受けられます。
 そこで基本に立ち、まずとにかく「線量を測る」。
 実態の把握なくして、住民は日々の営みにおいての有効な判断材料が持てません。そんな状況では「分断」そのものにすら中身がないのです。

アップデートされ続ける石井先生の報告最後には、新たな締めの言葉が

 冒頭に、今回の事故が生んだ「自ら動き、判断し、協働する」という3つの教訓をあげました。しかし、本来それらは当り前の人間の価値だったと言えないでしょうか。原発災害からは、多少無理矢理でも何らか前向きな機能として、「『当り前がそうでなくなっていたこと』を明らかにしてくれた」が、あげられるかもしれません。

 協同組合の父であるロバート・オーウェンは、
「もし、人々の意見を一致させることができないとしたら、せめて、皆の心を寄せ合わせるよう務めようでないか」
と言いました。
 その「心を寄せ合うべき」状況こそ、現在の福島にありはしないでしょうか。

 また、どじょスク!主体であるJA新ふくしまの玄関口の壁にも、同じくオーウェンの、

「心から結びつき助け合うことは、人類の普遍的な利益である」

という言葉がかけてあります。

 私たちは引き続き、数多ある分断の中から生まれてきた「かつてない団結」をすすめていく所存です。

 現在、スクリーニング作業は果樹園ではJA新ふくしま管内の6割強、田んぼは約35%まで終了しています。今後さしあたっての課題は、願わくば来年の田んぼ作付けが始まる4月頃までにJA新ふくしま管内の圃場すべてを測り終えた後、測定範囲を広げていけるかにあります。

 どじょスク!を牽引する福島大の小山・石井両先生はこの6月、福島県内17農協の組合長様御一行を引き連れてのチェルノブイリ視察を敢行されました。皆様で、福島以前に苦難の経験を重ねてきた彼の地の取組みを目の当たりにし、その意義、必要性を共有いただけたと伝え聞いております。

 本日は福島の今について報告させていただく大変貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。

 どうぞ今後とも変わらぬご支援のほど、よろしくお願いいたします。

7/19/2013
事務局