東京電力・福島第一原子力発電所の事故は、福島県内の農地を広範囲に汚染しました。
セシウムなどの放射性物質は土壌を通じて農作物に移行するため、現在は100ベクレル/kg未満という国が定めた基準で、生産品の出荷制限規制が実施されています。しかしそれも、そもそもが農地=土壌の汚染状況を把握した上での 規制ではありません。おのずと、いつもどこかで基準値を超える農産物が生産されてしまう 可能性が否めないのです。また、ある地域で一つでも基準値を超えた農産物が出ると、その一帯全域の農産物が汚染されているかのような印象を消費者に与えます。結果、いつまでも「福島県産は危険」という風評被害が払拭できません。
「土壌スクリーニング」はチェルノブイリ事故以来、ベラルーシ、ウクライナで取られている手法を参考に、より安全で安心な生産—流通—消費のシステムをつくろうとする取組みの一環として位置づけられています。目的は、全農地を対象に水田、畑1枚ごとの放射性物質を測定し、汚染状況を詳細な単位で明らかにすること。そうすることで、「生産可能な農地」「除染を行うことで生産が可能な農地」「作付制限が必要な農地」といった、汚染状況に応じた対策をとれるようになります。
そういった綿密な測定を経て、 農作物を放射性物質の移行率が低いものへ転換することも可能となります。その結果としてはじめて、より安全・安心且つ、効率的な生産が実現し、農家の生産意欲向上や福島県の農業の維持につながるのです。