2013年5月15日(水)の交流会


  更新滞り気味な事務局ブログ。国内外からの来客と現場視察、プロジェクトアピール用の新たなDVD制作、夏に控える諸々イベントの準備に追われています。
 福島からお届けしたい出来事、語られた言葉は恒常的にある中で、今週水曜夜に行われた交流会も印象的で、胸に響くものでした。
 今回ご参加いただいた地元生産農家さんは、伊達市月舘町の宿泊施設「つきだて花工房」で直売所を運営される千葉英行さん。福大・朴先生にご紹介いただきました。

今週来福いただいたボランティアは、コープ共済連・小島様、日生協関西地連・小川様、大阪いずみ市民生協・谷様。プロジェクトには福大・小山チームから朴先生、林先生の支援も加わり、前進しています

  月舘町は、高い線量から「帰還困難区域」、「居住制限区域」等々に指定され、期せずして、原発事故でふりかかった苦難と共にその名が全国区となってしまった飯舘村や川俣町に隣接しています。
 町には、昔は5000人以上いた町民も今は3000人以下。限界集落も多く、そんな場所で何かをしようとする時、行政とケンカしても勝負にならない。だからこそ「1人ずつでも、仲間を増やそう」という気持ちでここまできたと、千葉さん。その、地域の声を代弁されてきた言葉には、揺るがぬ説得力がありました。

 原発事故直後、誰もどうすべきか指示をくれない。自分たちはもちろん、行政にしてもどうしていいかわからない。もう直売所を閉めるしかない。そんな状況下、初めて見えた光明が、それこそ福大・小山先生の取組みだった。そう千葉さんは、当時を思い返しながら語ってくださいました。
 3・11前から、小山先生が地産地消促進の一環として取組まれていた「マルシェ」。そして、2011年10月開催の「マルシェ」で、お客さんが食品ベクレル・モニターでの計測の実演を見て、実際に納得して野菜を買っていくのを目の当たりにし、加工品しか持っていっていなかった千葉さんは驚かれたと言います。その時、「計測とデータ公開」の大切さを痛感されたのでした。
 とはいえ、4〜50人の農家さんがつくる農作物を100円から売る直売場が、高価なベクレル・モニターを購入することはできません。すると、国際協力NGO「アーユス」さんから、直売所への機器の寄付がありました。

事務所で活躍していたのは、福島県生協連にあるのと同じ、ATOMTEX社の食品ベクレル・モニター

 千葉さんは、初めて機器が入ってきた時、それは嬉しかったと仰います。そして、当初は何らかの数値が出ることで他の大丈夫な農作物にまで風評被害が及ぶことを恐れていた農家さんにも、つぶさにその必要性を説き、納得してもらいながら、今日まで計測を続けられてきました。
 それらの体験を通じ、感じられたいくつかのことがあったと聞きました。

 まず、「そんな状況の中で生きていくには、『どうせ〜』と投げやりにならず、自分で考える」こと。
 「人は絶対に一人では生きていけない」こと。
 「必要なことはしっかり声に出し、そうすることで一人でも多くの人と繋がっていくことが、生き甲斐にもなっていく」こと。
 「誰かを突き上げ、責任を負わせて終わることではない」こと。
 そして、そういった活動や気持ち、気付きの中で御自身を支える大きな力だったのは、「県外の人が福島について心配してくれていることを、ニュースを通じてでなく、直接会い、話をしながら確認できた」こと。

 測定器が直売所に来ると、投げかけられる質問は「それで、食べられるの?」、「子どもに、食べさせられるの?」というところに集約されました。
 放射能の数値は人によって感じ方が違う。農家は当然0ベクレルを目指している。そして、当然その農家にも、家には子どもがいる。地域の農家には高齢者が多いが、そもそもの幸せは、自分がつくった美味しい農作物を子どもや孫に食べさせること。今では計測を有料にしたり、実施計測数が減ってきているところも少なくない。だからこそ、持ち込まれる農作物はすべて無料で、当り前に直売所で扱う全品に測定済みシールを貼るべく、測定を日常とするために続けられています。



 お聞きしたいことはたくさんありつつも、今週の交流会は同時に、カナダはブリティッシュ・コロンビア大学から福島視察に来られたデビッド・エジントン教授の歓迎会と共同開催でした。
 エジントン教授は災害復興の世界的な専門家。震災直後の神戸、昨年もニュージーランドはクライストチャーチを訪れ、3・11以降は2度目の来日。今回の福島にも宮城県の視察後にいらっしゃり、同日の日中は相馬の市役所でヒアリングをされました。

この後、まだ津波の爪痕残る海辺も案内してくださった相馬市役所商工観光課・佐藤課長。ありがとうございました

 そして福島市内に戻り、どじょスク!現場視察もされました。

 教授との出会いは、先日4月にロスでしてきた、福島/どじょスク!についての学会報告セッションを聞きに来てくださったことに遡ります。報告を経て、初のお客様です。
 また、その時事務局が驚いたのは、全米のみならず、世界中から優秀な研究者たちが集結した学会「AAG」で、報告後に福島について聞かれた質問は、日本においては一年以上前、各所で普通にされていた質問のような感触だったこと。今回教授に、改めて「あの時の私たちの報告はどうでした?」と聞くと、「とても面白かった。それは、福島の本当の状況も取組みも、どこからも伝わってこないから」とのお答えでした。
 そんな状況を払拭し、どじょスク!PJの実践と意義を国内外により広く伝えるべく、DVD制作のための現場撮影が進行中です。こちらは、国際協力NGOセンター「JANIC」さんのお力添えで、実現しています。

田植えの季節到来で、田んぼにまさに水が入っていく瞬間。すべての田んぼに水が入ると、スクリーニング現場も果樹園に移ります

実は早速、千葉さんの直売所の撮影もさせていただきました。大変お世話になります。これまで計測した、すべてのデータの保管状況です

 諸々が具体的なかたちとなり次第、随時また、報告させていただきます。

5/17/2013
事務局