12月19日晩の交流会ゲストは、JA新ふくしまのスクリーニング・スタッフであり兼業農家である、阿部さんに来ていただきました。
全国から来福されたボランティアの皆様には、2人で1チームとなる現地スタッフ3人目のサポート要員として作業いただいています。日々稼動している現地スタッフ8名で4チームが編成され、その中にあってリーダー的存在として活躍されているのが阿部さんです。
「どうせする仕事なんだから、楽しくすべき。だから私は月曜日からやる気で臨むんです」
この週ボランティアに来て下さったのは、コープにいがた・大島様とコープ共済連・松本様。
新潟の御実家が農家の大島さんと、効果的な情報発信のツボを教示くださった松本さんのお話に、ご多忙の中顔を出してくださった福大・小山先生も加わり、そこで期せずして噛み合ったのは、小山先生と阿部さんのお2人でした。
実は、阿部さんの以前の職場はブラジル。地球の裏側の彼の地から、御実家が営む農業を継ぐために帰国し、今に至るといいます。そして小山先生は、学生時代にブラジルの日系人村トメヤスに2ヶ月間滞在したことがあるとのこと。そこには学校運営までしている農協があり、産業組合が生まれた当時のかたちが今も残っている。
つまり予想外に、ブラジルにおける日系人社会とそこに受け継がれる農業の形態についての話を、お2人から聞くことができました。
3年半ブラジルに住み、心情として、やはり故郷に帰ってきたかったという阿部さん。昨年の震災と原発事故を受け、何か「福島にとっていいことをしたい」という気持ちが強くあったと仰います。そしてやはり農家さんの一番の懸念は、自分たちがつくったものを子どもに食べさせていいのかどうか。実際に計測中、話す機会のある農家さんの一番の質問は「ここで作物つくっていいの?」だそうです。その懸念の払拭に直結する「土壌スクリーニング・プロジェクト」。そこに阿部さんが辿り着いたのは、必然だったのかもしれません。
「農家が胸をはって作物をつくり、出荷できるように」
との言葉には、地元生産農家さんとしての矜持を感じました。
ボランティアの皆様を福島の現場で実際に受け入れてくださるのは、プロジェクトのためにJAに雇用された8人の専属スタッフ。今回の阿部さんのお話もさらに深く掘り下げるのはもちろん、年明けにはそれぞれの素顔に迫る記事を紹介していきます。
御自身も農家の長男であることで、阿部さんや小山先生の話に、「お気持ちわかります」と同意されつつ耳を傾けていた大島さん。近いように感じる新潟でも福島の本当の現状についての情報は少ない。だからこうして現地に来たことで、漠然としていた苦難がはっきりしたものとして捉えられただけでも、意義があった。作業そのものは、ただのお客さんのようだった自分が心苦しかったが、それでもレクチャーや現地の人との対話を通じ、今は「福島産の作物は大丈夫」と言える自分がいるとのことでした。
また、松本さんには、情報発信やさらなるボランティアの呼びかけ方法に関して、頼もしいアドバイスを何点もいただきました。レクチャーを受け、津波被害とまったく性格の違う現場をみて、実際に作業に従事し、これは誰でも参加できることだとわかった。また、以前も他の方からいただいたことのある「短い日程のコースも用意することで参加のハードルが下がるのでは」との助言をいただきました。
当初は田んぼの作付けのはじまる来年4月頃までという予定だった本プロジェクト。ここまでの進捗状況から逆算し、どうやら来年の今頃まで延びることはほぼ確実です。助言をありがたく拝受し、今後の呼びかけに反映させていきます。
12/28/2012
事務局