ならコープさんご来福


 土壌スクリーニング・プロジェクトの根幹を成す、土壌の放射性物質含有量を測定するATOMTEX社AT6101DR(通称「ロケット」)他、

日々の外部被曝量を測る積算計も寄贈いただき、さらにプロジェクト・ボランティアには、これまで参加いただいたのべ総数36名中13名を送り込んでくださっているならコープさんが、現地視察のため来福されました。

 県生協連に到着された後は早速、飯舘村所縁の家庭料理食堂「彩食おさい」にて、原発災害後八面六臂の活躍を続けるかーちゃんの力・プロジェクト協議会会長・渡邊とみ子さんとの交流会。

奥からならコープ・米田常任理事、かーちゃんの力・渡邊とみ子さん、ならコープ人事/総務担当・杉本さん

多量の放射性物質が降下して住民は避難を余儀なくされ、その苦労がメディアに取りあげられ続ける飯舘村ではありますが、「やっぱり夢、希望がないと人間はだめだね」と、それを体現されているとみ子さんの言葉が響きました。

 翌日午前は、JA新ふくしま・プロジェクト担当の紺野氏から作業の進捗状況とJAとして考えるプロジェクトの今後の共有がありました。

残っている果樹園の測定は、夏の間にほぼ確実に終わるだろう。問題は現在20%弱しか進んでいない田んぼ。雪解け以降4月の作付け開始まではもちろん、10月頃の稲刈り以降を最善の態勢で、雪が降りだす前に一気に終わらすべく臨みたいとの強い決意がありました。
 その後はスクリーニング現場視察へ。市内の雪は溶けていながら、やはり少し郊外へ出て標高が上がると凍てつく氷が田んぼを覆っています。

場所は福島市松川町金沢付近

それでも「作業再開まであと少しかな」と楽観したところ、実はこの次の日にまたまとまった降雪があったのでした。事務局も、案内してくださった現場スタッフ鈴木さん、佐藤さんと共に、早期の作業再開を願った次第です。

 午後は福大・石井秀樹先生の取り計らいで、普段はレクチャーのパワーポイントを通じて拝見する、伊達市霊山小国の試験栽培現場視察に行きました。

水田の部分部分を波板で仕切り、その内外でセシウム移行率を比較する実験の名残り

今も、昨年12月に政府の原子力災害現地対策本部が唐突に通達した特定避難勧奨地点指定解除に揺れる彼の地。居住を許可された土地としては最も線量の高い部類に入り、住民の被曝の問題はもちろん、作付けや賠償に関して等々、たくさんの問題が山積しています。これまでもこれからも現場で汗する福大・小山チームの苦労と共に、そこかしこで行われていた除染作業、山積みになった汚染土壌に、福島の現実を垣間見た気がしました。





 レクチャーでいつも石井先生が指摘されることですが、霊山小国は農協発祥の地。その成り立ちからして住民が団結することから始まった土地が、誰もが予想しなかったかたちでさらなる団結を促される、何らか運命的なものがそこにあるのでしょうか。

 最後は福島大学にて、プロジェクトを牽引する小山先生も席についてくださり、小山チームとしての力強い話を伺いました。

 石井先生が仰った、「何もないところからかたちをつくりだすのが、自分たちの役割」、「これだけのデータを集積し分析することで、行政にしても上からただなめられなくなる」という点は、小山先生が予々仰る「これだけの測定、分析、予防原則にのっとった取組みを続けていることそのものが、最終的には風評被害の払拭にまで繋がっていく」ということに重なります。
 また、小山先生による「今非難されている除染だって、作業員は被ばくし中抜きもされて被害者。状況をとにかく可視化して実態がわかれば不適切除染はなくなるし、それは農家さんにしても、確かな状況の把握と対策で、まずは自分自身に自信を持てるようになる」という、至極真っ当な指摘もありました。
 「土壌スクリーニング」はとにかく「測る」作業です。よくよく考えれば、小山先生とチーム皆さんが提唱されいることは本当に当然の、一般人でもわかる「そもそもまずはそこからでしょう」ということ。それさえも、石井先生の「どんな立場にいるかで、災害の見方が全然変わる」というご指摘にあるように、当り前のことが当り前に見えず、もちろん実践もされない状況が、問題の根本にあるのかもしれません。
 事務局は改めて、小山先生が「農家さんが後になってから『やっておいて良かった』と、もっとそういう風に思ってもらえる状況ができてくることが大切」と仰るように、さらにプロジェクトの意義を理解していただき、少しでも皆様の安心と自信へと繋げるべく継続していくことが肝要と感じたのでした。

 ならのお2人が帰られた後、2月6日、よく考えれば初めて行った福島駅最寄りの環境省除染情報プラザにて、「ご存知ですか?安全な食生活のポイント」セミナーに出席しました。

消費者庁から来られた担当の方が誠実に対応されていることはわかりますが、問題はその消費者庁、さらには環境省、厚労省、文科省、経産省等々までを跨ぎます。未だにそれらの間で確かな情報共有、意思統一がされてないような状態では、自らの身を守るべく、切実に、意識高く、状況の把握に尽力している市民の要望には答えられる体制にないように感じます。

2/8/2013
事務局