スクリーニング作業休止の間に(1月28日の週)


 1/30(水)に開催されたJA新ふくしま「放射性物質土壌調査中間検討会」での福大・小山チームの報告にあったように、セシウムの農作物への移行メカニズムはかなり突き詰めたところまで解明されてきており、それを、そもそもの農業生産の強固な基盤をつくるため、土壌の放射性物質含有量はもちろん含む、地域の地質分析にまで繋げていこうという大きな方向性については、先日facebookを通じて報告させていただきました。

作付け制限を受けていた大波地区水田一筆調査地図一覧も完成

 木、金曜は茨城県生協連、新潟県生協連の皆様総勢約20名様が福島県視察にいらっしゃり、市内CRMS(市民放射能測定所)を見学したりしながら、福島県生協連一同との連帯を強めました。

CRMSでは2011年10月の開設以来、約5000人をWBC(ホール・ボディ・カウンター)で測定してきたとのこと

 また、2/1(金)午後には内閣府食品安全委員会、消費者庁、厚労省、農水省、福島県主催の「食と放射能のシンポジウム」がありました。

場所は福島テルサ

 そこで最後、質疑応答の時間の最初にあった質問に、今も予断を許さない状況にある課題が凝縮している気がして、事務局はとっさにレコーダーを回しました。
 以下、やりとり全文のおこしです。

福島市議会議員・大内ゆうだい 厚労省の説明で頂いた資料の記載には、土壌の放射線量や農作物の移行係数を基に計算すると記載がありますが、農水省の本日の講演では、土壌の放射線量と農作物への移行に関連性はなく、土壌中のカリ肥料の存在比率に起因するとの説明があり、厚労省と農水省で言っていることがコトが違う。見解がダブルスタンダードになっているのではないか?そしてセシウム以外の核種について、時間がかかるから測定しないというのは福島の人たちは納得できない。ルテニウムは身体に取り込まれにくいから良いとしても、特にストロンチウムはやるべきで、全量検査がたとえできなかったとしても、サンプルだったとしても、ストロンチウムないしルテニウムないしプルトニムが、一応でも「測った上でありませんでした」という、すべからい検査態勢というんですか。消費者に対してそういう風に提示していただきたいものだなあと思っているんですが、そのへんはいかがでしょうか?

厚労省・鈴木貴士 厚労省の立場でお話をさせていただきますが、移行係数がまったく関係ないということではなくてですね、カリウムの濃度などを考慮するとそちらの方がファクターとして効いていたということだったかと思います。厚労省が使っている移行係数というのは、国際機関から出しているデータであったり、それから国内複数の研究機関が出しているデータというものを参照しまして、その中で基準値として一番厳しくなる方法のものを選んで使っている。ですから、専門家の先生方の議論の中でも、「そこまで安全サイドの想定ばかりを置く必要はないのではないか」と、そういう意見もかなりあったほどでありますので、そういった意味では、単純な移行係数以外のファクターも読み込めるように、そういう安全の余裕をかなり持って、科学的にはそういう風に考えておりますので、そこは「多少のズレがあっても大丈夫だ」と思っております。それから、ストロンチウムを実際に測る必要があるのではないかという点ですけれども、ご指摘の通りそういったストロンチウムの検査を各自治体様の方で多数の食品について行うということができればそれが理想的なのかもしれませんが、本来の目的はあくまで「流通する食品のすべてが安全な食品だけになっている」ということですので、どうしてもそのストロンチウム90というものの測定に時間がかかってしまうという現実があって、その検査件数が確保できないという問題がありますので、それであればその目的を考えて、それを達成する上ではですね、「比率を用いてセシウムで管理するということの方が、むしろ安全に資する」という風なことがあって、このような対応をしています。ただ、あくまでその「比率」という想定を用いてつくられた基準値ですので、その基準が妥当なものであるか、その比率というものが想定の範囲にあるのかということは、専門家の先生方に測定をしていただいておりまして、「それが正しい」ということを検証しているところであります。

農水省・安岡澄人 簡単に補足をさせていただきます。私が示したデータというのはですね、当然米に関して言えば、土壌から根を通じて吸いますんで、土壌中に含まれるセシウムってすごく大事なんですね。ただすごく単純に皆さん捉えてしまう傾向があって、「土壌の濃度が決まれば、それによって玄米の濃度も決まるんじゃないか」と思ってらっしゃる方がいたりするので、「実際のデータはこうなっていますよ」ということを示すために、お示ししました。要は、他のファクターも結構あって、決まっているんですよと。それは実際に土壌から、例えば農作物への移行のし易さなんていうのはそれぞれ品目ごとにそれぞれバラつきもありますけれども、どの程度かということはわかってきています。そういう2つの話があって、現場としては、土壌の方のことだけじゃなくて決まってきているということですね。

 福島の農作物に抱かれる懸念の代表的なものとして「セシウムしか測っていないこと」、「食品のモニタリングでは、どうしても粉砕した状態の1キロの農作物が必要。ということは、測定して安全を確認したものを口にすることは不可能」の2点があります。
 それなのに、変わらぬセシウム測定態勢のみで押し切ろうとする姿勢に不信感が募るのは当然で、おのずと改めて感じたのが、土壌スクリーニングの重要性でした。研究者による農作物への放射性物質の移行メカニズム解明に付随して、これは現状理想の域を出ませんが、セシウムのみならず、核種それぞれについての土壌スクリーニング作業とその分布マップ作成しか、本当の意味での安全、安心構築には繋がりません。

 それにしても1/28(月)には「食の安全・安心アカデミー」がありましたし、

さらに2/6(水)は「県民講座:ご存知ですか?安全な食生活のポイント」(主催:消費者庁・環境省/協力:福島県・福島県立医大)もあります。
 「風評被害対策」の名の下、ピンポイントな予算13億円がついたという福島県。問題の核心に触れないセミナーが乱立し、根源的な被害対策のため必要不可欠な取組みがないがしろにされないことを願います。

2013年2月4日
事務局