3月4日から一週間


 久しぶりの更新です。「311特需」とでも呼ぶべきか、福島はここ2、3週間、妙な忙しさの中にあった気がします。その節目となった、3月11日から2年目の日までの1週間について、更新します。

 季節と共に、試験栽培などでさらに忙しくなる福大・石井先生。月曜レクチャーは、4月頃から映像に切り替わる準備をすすめています。おのずと、あと数回しか生で聞けないであろう先生のレクチャー、貴重です。

 今週は、予々大変お世話になっているならコープ/CWSさんより西山さん、丸山さん、木村さんのお三方、そして毎週1名ずつ来福してくださる、大阪いずみ市民生協さんより高野さんに、ボランティア参加いただきました。深謝です。

 水曜の交流会には、1970年から有機農業をはじめた「二本松有機農業研究会」大内信一さんの御子息であり跡継ぎ、督(おさむ)さんに来ていただきました。大内信一さんは、福島県内で有機農業といえばまず名前があがり、若い農家さんが学ぶ登竜門的役割も果たし、何より一度農作物を食べれば、普通とは明らかに違うその味に体が喜び記憶する、屈指の農家さんです。
 大内さんが震災、原発事故直後、ガソリンの確保もままならないうちから耕耘機に乗り込み「やってみなきゃわからんだろう!」と圃場を耕し始めた姿には、督さんも驚いたと言います。
「いい意味で農業バカなんで」
と、督さんは笑いながら「そもそも40年前、有機なんて変態扱いだったそうです」と続けます。有機農業は、大切な野菜の鮮度と実現可能な配達範囲を考えると、生産地からざっくり30キロ圏内くらいの地産地消が現実的とのこと。その意味で、地元でも農作物が売れなくなった原発事故は、大打撃でした。

 「放射能」という難しくわからないものを前に、県民にも「福島産は避けた方が無難」 という空気が広がったといいます。
 督さんの、
「ここで空間線量が1マイクロ・シーベルトあれば、それを伝えて欲しい。この普通じゃない状況下に、たくさんの人が生きていることを知って欲しい」
という言葉、考えさせられました。
 測りもしないで「安全」という行政はむしろ足枷。お客さんが同情で買ってくれることにも、自惚れるわけにはいかない。たとえどんなに手間がかかってても、測っては結果を見せ続けることしかない。
 今大事なことは「ここに在り続けることだと思う」と、督さんは言います。
「父はもともと売ることどころか、つくることしか頭になかったですが(笑)、今は、目先の利益じゃないことを考える。無理して売り込んで質を下げずに、まずは何としてでも、続ける。これはどう考えても、ゆうに5、10年は必要なこと。どうか、長い目で応援して欲しい」
 事故以降、以前の4割まで売上が落ち、今も5割まで戻っただけという督さんでしたが、言葉の節々に揺るがぬ確信を聞いてとれました。
 そもそも、これは原発事故云々に関わらず、社会の在り方を突き詰めた時、
「農家が自立しないと、都会だって成立しない」
ということがあると聞きます。
 督さんからは、まず農家さんご自身がそのことを自覚する必要性を肝に銘じておられる、その矜持を感じたのでした。

 木曜のワークショップでは、CWS・西山さんから「福島県の人が県産品を避けているという事実が衝撃だった」との感想がありました。「測って出なければいいと思っていたが、実際には、その根拠まで説明する必要がある」とのご指摘、その通りと思います。
 CWS・丸山さんが印象的だった言葉は、大内さんの「福島は危険と伝えて欲しい」だったとのこと。まず何より測って出る数値を正直に公表し続ける。そしてその中で、あらゆる可能な安全対策を実施しながら、時間をかけて安全と、それに付随する安心、信頼を構築していかなければなりません。
  大阪の高野さんは、関西での福島への意識は「風化」を通り過ぎ、もう「遮断」と表現されました。 情報がない中、それでも安心をつくる唯一の方法は地道な作業のみ。生協がそこで、どこまで支援できるか悩ましいと仰りながら、広報担当のお立場から、ありがたい助言をいくつもくださいました。



 そしてならコープ・木村さんは、2人目となるリピーターです。前回10月の来福時から変わらぬ現場スタッフのモチベーションを喜んでくださり、同時に、ならでも根強い「被ばくは大丈夫?」という疑問に対応すべく、今回は福島市内のCRMS=市民放射能測定所にて、WBC=ホール・ボディ・カウンターで計測をされていきました。結果はもちろん、不検出でした。
 JA新ふくしま・紺野さんも、リピーターの方の戦力を大いに頼りにされています。何よりも、再会は嬉しいものです。
 本当に、ありがとうございます!

 また3月10日(日)には、ちばコープさんのご厚意で、幕張メッセでの「きやっせ物産展2013」に出展させていただきました。

スクリーニング現場リーダー・スタッフ、菅野さん

 同日朝、準備で、初めてプロジェクトが全国放送の電波に乗ったNHK「サキどり」は見逃しましたが、テレビと現場から、少しでもプロジェクトの意義が伝わればと願います。

菅野さん他、福島から駆けつけたJA新ふくしま・紺野さん、もう一人の現場リーダー・阿部さんの活躍で、用意したきゅうりとお米は午前中で完売

 きやっせには結局3万人以上の来場者があったとのこと。さらには「コープみらい」始動を3月21日(木)に控え、本当に、おめでとうございます。

 そして、3月11日(月)当日は、県文化センターにて、東日本大震災犠牲者追悼式がありました。




 311から2年が経ち、たくさんのお気遣い、感謝の念以外ありません。ただ、福島で起きていることは311頃だけに起きるわけではなく、日々の営みの中で毎日、起きています。 
 今後ともどうか、変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

3/14/2013
事務局