去る6月5日(水)の交流会、どじょスク!も大変お世話になっています、「ふくしま土壌クラブ」から、斎藤隆雄さんに参加いただきました。
ありがとうございました。
斎藤さんのお言葉が、そもそも311前からの、真摯な農業への姿勢が、この未曾有の原発災害に立ち向かう上で頼もしく、貴重な力となっている証のように感じました。
以下、お伝えいたします。
植物を栽培することについての、最も基本的な部分の自分の考え方なのですが、人間を育てるのとほぼ一緒です。
主体はあくまでも植物(果樹や野菜)にあって、人間の役割はその成長を手助けすることにあります。つまり、美味しい果物・野菜が育つ環境を整える、人間のできるレベルで手助けするということです。
そしてその環境を将来に渡って維持していくことは、未来の人たちに対する責務でもあると思っています。
昨日は福島大学で講義がありました。
講師の福島大学・長谷川浩先生の話では、ちゃんとした土を作っていればセシウムの植物への移行はかなり抑えられるとのこと。
先生は、新潟大学の野中昌法教授らが提言なさっている話を引用しつつ、講義をされました。その部分は、「時間を経るごとに放射性セシウムは土壌の粘土鉱物や腐植に対して強い吸着や固定化が進み、植物に移行しにくくなっている」ということでした。
「ちゃんとした土」とは、微生物が働いて団粒構造もできていて、その土の中に水も抱えられる状態になっていて、窒素(N)やその他肥料分も循環してくれる土です。
少し、植物と肥料の話を、補足説明細せて頂きます。
肥料三要素は窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)です。もちろんカルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)その他微量要素もありますが、最も大切なものは「窒素(N)」と言われております。その理由は、窒素(N)はたんぱく質の重要な構成成分だからです。
植物の体(細胞)は、たんぱく質からできております。
我々人間との大きな違いは、植物はたんぱく質を自ら合成できます。そして、たんぱく質とは確かアミノ酸20種類ぐらいで構成されていたと記憶しています。アミノ酸の構造式をみますと、炭素(C)・水素(H)・窒素(N)・酸素(O)で構成されております。
また、光合成の式は以下のようになります。
二酸化炭素(6CO2)+水(12H2O)+光エネルギー →
→ ブドウ糖(C6H12O6)+酸素(6CO2)+水(6H2O)
炭素(C)と水素(H)と酸素(O)で構成されるものは、ブドウ糖の他に炭水化物やセルロース等がありますが、たんぱく質になるにはさらに窒素(N)が必要です。水や二酸化炭素はどんな畑でも十分な量が確保できますが(常に供給されていますが)、窒素(N)は別です。
こんな理由で、窒素(N)は肥料の中でも最も重要なものになっております。これを自然循環の中でうまく回すには、土の中では微生物の力が大切になってきます。
落ち葉や枯れ草や動物、虫の死骸や糞を、微生物や土の中の小さな生き物が分解してくれます。そしてその分解された窒素等の養分を、植物が吸って成長します。さらにその植物を、我々人間や動物や虫は食物として摂取します。
このように、窒素等の養分は自然循環しています。
肥料や植物の栄養素、土の物理性や化学性の話をするともっと複雑なのですが、大雑把に植物を語ると以上のような話になります。
こういったことから、「土は生きている」、「土は生きもの」と仰る人もいます。ここ日本、特に福島の多くの畑は肥沃な土が多く、非常に恵まれた土地です。この恵まれた土を大事にして、いつまでも、自然循環の中で優れた品質の果物を育てていきたいです。
父から受け継いだ斎藤果樹園では、植物を育てることにおいて最も重要な項目は、「土と太陽」だと考えております。
「有機物の投入により土中の微生物の活性化を測り、剪定によって樹形を整え、光合成の最大化を図る」。
これが私の果樹栽培の基本です。
光合成で葡萄糖を造り、さらに窒素(N)を加えてたんぱく質を供給する。
土を作るには100年単位の長いスパンで物を考えなければなりません。それはもちろん、おのずと人間の寿命よりも長くなるわけで、何世代にも渡って努力することが必要になります。
農業に於いて、私が父に最も感謝していることは、行政の言う通りにせず(化学肥料投入で増産しろ等々の指示)、自然循環型の土づくりを50年以上続けてきたことです。
今回の原発災害に於いて、栽培に関して最も頭を悩ましてことが、今までの斎藤果樹園流の栽培が不可能になるのではないかということでした。
今現在は、自分の目指している農業に戻っております。
ちなみに、我が果樹園では化学肥料使用はゼロです。原発災害以降悩み為したが、味が変わることの方が恐怖で、投入には踏み切れませんでした。
6/11/2013
事務局